眞白井エイドです。
普段は、YoutubeでMtGパイオニアに関する配信や、Twitterでパイオニア週刊紙「週刊ふんわりパイオニア便り」を発行しています。
こちらの記事は、パイオニア競技イベント/大型イベントで結果を残されたプレイヤーさん=【巧者】に、デッキやプレイ、あるいはバックグラウンドに関するお話を訊いてみよう!というインタビュー企画「巧者に訊く」・若みどりさん編の【後編】になります。
ぜひ、【前編】からセットでお読みください!
前編では【ロータス・コンボ】というデッキ自体についてお話を伺ってきましたが、後編では若みどりさんが結果を残された「THE LAST SUN 2023(以下、TLS2023)」で使用されたリストについてのお話を伺っていきます!
今回使用したリストについて
それでは次に、一般的なリストと比較した際の、今回使用されたリストの特徴や工夫した点をお教えください。
一般的なリストとの主な差異は次の点です。
- 《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》不採用⇔《首謀者の収得/Mastermind’s Acquisition》・《副陽の接近/Approach of the Second Sun》採用
- 《闇の誓願/Dark Petition》不採用⇔《時を越えた探索/Dig Through Time》・《来世の警告/Behold the Beyond》採用
- マナ加速部分の構成が「《遵法長、バラル/Baral, Chief of Compliance》・《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》・《洞窟探検/Spelunking》」
MOでは《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》をフィニッシャーに据えて、《闇の誓願/Dark Petition》をサーチ手段にしているリストが主流ですよね。
まず、今回は【ラクドス・コプター】【ボロス召集】を意識してデッキを構築しました。
半分は失敗だったのですが…こちらについては後述します。
勝ち手段について
勝ち手段としての《首謀者の収得/Mastermind’s Acquisition》からの《副陽の接近/Approach of the Second Sun》と、《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》ループには本当に多種多様な差異がありますが、最も大きいものをピンポイントで抜き出すと、『勝ち手段としての信頼性は《首謀者の収得》が上』です。
ふむふむ。
《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》で勝つ時は、《バーラ・ゲドの復活/Bala Ged Recovery》により、《希望の標、チャンドラ》を何度も使い回します。
そのためには前提条件があり、《希望の標、チャンドラ》本体はもちろん、《バーラ・ゲドの復活》や《全知/Omniscience》、《溺神の信奉者、リーア/Lier, Disciple of the Drowned》》、《天上都市、大田原/Otawara, Soaring City》の残枚数が非常に重要です。
ざっくり言うと、《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》以外のループ用カードが3〜4割ほど墓地や追放に行くと勝てなくなりますし、《塵へのしがみつき/Cling to Dust》などでループ中の《希望の標、チャンドラ》を狙われた場合も勝てないです。
そこは自分もMOのリストを見ていて気になっていた点でした。
【イゼット・フェニックス】【アブザン探検コンボ】が強くて墓地対策が必ず入っている時期なのに、脆くないのかな?と。
一方で《首謀者の収得/Mastermind’s Acquisition》ですが、《副陽の接近/Approach of the Second Sun》が勝ち手段として強固です。
メインボードの《首謀者の収得》以外に、追放されて困るカードが無いのです。
《全知/Omniscience》や《溺神の信奉者、リーア/Lier, Disciple of the Drowned》を潰された場合でも、一ターン中に勝てます。
《見えざる糸/Hidden Strings》と《全知/Omniscience》を潰されて《安らかなる眠り/Rest in Peace》を置かれた場合でも、《副陽の接近/Approach of the Second Sun》はライブラリーへ行くので、2ターンに分けて唱えることで勝利したこともあります。
おおー!
今回は、直前でメイン《塵へのしがみつき/Cling to Dust》投入【ダーク・フェニックス】が流行ったこともあり、仮想敵の【ボロス召集】や《墓地の侵入者/Graveyard Trespasser》に弱い《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》ではなく、《首謀者の収得/Mastermind’s Acquisition》を使用しました。
《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》型は、《塵へのしがみつき/Cling to Dust》でループを止められて負けるリスクがそれなりにあるので…。
実際に「TLS2023」の対【ボロス召集】で、《首謀者の収得/Mastermind’s Acquisition》から《至高の評決/Supreme Verdict》を持ってきて勝ったゲームもありましたので、ここは一長一短だと思います。
結局のところ《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》も《首謀者の収得/Mastermind’s Acquisition》も、マイナスXが強いやらサイド枠使うやらチューターが重いやら《出現の根本原理/Emergent Ultimatum》から持ってきた時どうだなど、それぞれメリットデメリットが違い過ぎるので、環境に合わせた選択が必要です。
現行の【ラクドス】・【アブザン探検コンボ】環境なら《希望の標、チャンドラ》型が良いと思います。
《闇の誓願》不採用について
《闇の誓願/Dark Petition》について語ると長いですが、簡潔に。
結論としては《来世の警告/Behold the Beyond》の採用はマストです。
その他の枠で《闇の誓願》を採用する分にはご自由に。
《来世の警告/Behold the Beyond》が無いと、《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》が越えられません。
この点が気にならない方は不採用でも良いと思います。MOでは【ラクドス・ミッドレンジ】の占有率が低いので。
日本人、【ラクドス・ミッドレンジ】大好きですからね。
《闇の誓願/Dark Petition》は、手札から唱える時に《見えざる糸/Hidden Strings》と《出現の根本原理/Emergent Ultimatum》を選べたり、《出現の根本原理》のパイルの選択肢が少し増えたりとメリットもあるのですが、「魔巧」が墓地対策に弱かったり、全体的にサイド後に弱いなどデメリットも多いです。
基本的にはメインボード限定の《出現の根本原理/Emergent Ultimatum》の水増しであり、私は不要だと考えています。
マナ加速について
【ボロス召集】を意識して、クリーチャー多めの構成にしています。
《遵法長、バラル/Baral, Chief of Compliance》はメインボードにおける《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》に対する完全回答であり、非常に優秀なブロッカーです。
また【ボロス召集】には単体除去が無いため、《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》でキルターンを1つ手前にズラすことがゲームプランとして良く刺さります。
純粋な3マナ加速として《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》や《傑士の神、レーデイン/Reidane, God of the Worthy》を貫通することもあれば、ブロッカーとしてもタフネス2が優秀です。
《旅するサテュロス/Voyaging Satyr》、本当に除去が無いとガンガン行動回数増えますからね…。
《不連続性/Discontinuity》や《物語の終わり/Tale’s End》などは、2マナしか加速しないこと、《見えざる糸/Hidden Strings》の対象とならないこと、ブロッカーではないこと、《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》などのメタクリーチャーに弱いことなどの弱点があります。
一方で、除去やハンデスに長ける【ラクドス・ミッドレンジ】などの黒系アグロには非クリーチャー系の加速が有効なので、ここは一長一短です。
《洞窟探検/Spelunking》は重めなので、【ラクドス・サクリファイス】などには有用ですが、【ラクドス・コプター】や【ボロス召集】・【アブザン探検コンボ】には有効と言えない採択でした。
相手にクロック間に合われてしまいそうですからね。
良かった点、変えたかった点など、実際プレイしてみてのリストの感触はいかがでしたか?
【ボロス召集】に対しては非常に良い構築でした。
メイン・サイドの多めのクリーチャーが刺さり、複数回当たって全て勝利出来ました。
一方で【ラクドス・コプター】にはあまり良い構築ではありませんでした。
非クリーチャー系の加速が少ないことからハンデスが刺さりやすく、また《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》非採用で全体除去の効力が落ちています。
大会では当たりませんでしたが、【アブザン探検コンボ】にも同じ理由で弱いと思います。
先述の失敗の部分ですね。
ただ、これらは両立が難しく、現在の【ボロス召集】が減ったメタゲームでは《希望の標、チャンドラ/Chandra, Hope’s Beacon》型を使用するでしょうが、当時どうすれば良かったかというのは、今振り返ってみても難しいです。
《厳しい試験官/Strict Proctor》採用のバント型が良かったのかもしれません。
実際、TLS2023後のMOではChallengeでバント型【ロータス・コンボ】が勝っていた記憶もあります。
コンボデッキは押し付けるだけのように見えて、環境をしっかり把握しないと自分の動きを洗練して強く出来ないと思っているのですが、【ロータス・コンボ】は特にその傾向が強いですね!
では最後に、このリストのベストカードがあれば教えてください!
コンポデッキなので全てのパーツが重要と言えますが、強いて挙げるなら《出現の根本原理/Emergent Ultimatum》です。
1枚コンボとも言えるフィニッシャーの存在が、【ロータス・コンボ】のデッキ強度を高めていると思います。
今回のイベントについて
では次に……今回参加された「TLS2023」へ参加されて、参加された感想はいかがでしたか?
TOP8に残れたことが非常に嬉しくて、それと同じくらい優勝出来なかったのが悔しいです。
「THE LAST SUN(TLS)」という大会自体には3〜4回くらい出ているんですが、前回惜しかった時はパイオニア全勝しつつ、レガシーのバブルで負けてしまったので、TOP8まで残れた今回はある意味リベンジの途中で終わった形なのかなと。
また次回、勝ち上がれるように頑張ります。
若みどりさんでも越えられていない「TLS」の壁……ぜひ、リベンジを果たしていただきたいですね…!来年の「TLS2024」でのお姿も楽しみにしています!
ちなみに、「TLS2023」でのベストバウトはどの試合でしたか?
ビデオフィーチャーされた3試合全てがベストバウトでした。
最初にフィーチャーされたレガシーラウンドでの、《衝撃の足音/Crashing Footfalls》の4/4サイ・トークン3体を、《孤独/Solitude》+《精霊界との接触/Touch the Spirit Realm》+《舷側砲の砲撃手/Broadside Bombardiers》で落としたシーンも。
パイオニアラウンドでの対【ラクドス・サクリファイス】での、ライフ1になり複数回のプレイミスを経て、最後のドローで《出現の根本原理/Emergent Ultimatum》を見つけたシーンも。
TOP8の対【ラクドス・ミッドレンジ】での、《睡蓮の原野/Lotus Field》を並べつつも何も引かずに投了した最期のシーンすら。
……自分のフィーチャーマッチは、良くも悪くも『生のマジック』が詰まっていたと思います。
マナフラッドもマジック!
そうですね……自分も同時試聴配信で試合の様子は拝見させていただいていたのですが、若みどりさんがお話されたシーンはどれも「勝負」の生きた面白さがあったというか、お互いの限られた手札と巡り合わせの中でいかに最大値をぶつけるか!という難しさとワクワク感がとても印象に残っています。
そして限られた中で「勝ち」につながる道筋を見つけられる・引き込める洞察力が、若みどりさんの強さを支えているのかなと、今回伺ったお話も含めて感じました!
逆に、今回のイベントでの反省点や、次の舞台までに改善したい点などはありましたか?
明確に有力候補だった【ラクドス・ミッドレンジ】in《回転翼機》について、テストプレイしなかった(する時間が無かった)ことを反省しました。
「余暇の確保」と「睡眠時間」は相反する永遠の課題です。
どちらもプレイ精度を高めるために必要不可欠ですが、それを言い訳にしないよう、両立を目指してこれからも楽しく効率よく大会に臨みたいです。
お話にもありましたが、【ロータス・コンボ】は特に調整に時間がかかるデッキですしね……。
ご自身の生活と合わせて時間を確保されるご苦労は大きい事かと思います。眞白井ですら苦労しているというのに。
楽しく効率よく!は、真剣にMtGを楽しむ競技寄りプレイヤーの大事な合言葉ですね!
自分も心がけていきたいものです。
では、最後に。
この記事を読んで【ロータス・コンボ】を握ってみたい!と思った方もいるのではないかと思いますし、日本語圏の【ロータス・コンボ】プレイヤーにとって若みどりさんはとても心強い先駆者のひとりではないかと思います。
そんな、【ロータス・コンボ】を握っている方・これから握ろうとする方にひとことお願いします!
ロータスを楽しみましょー!
私は今日、《大ドルイドの魔除け/Archdruid’s Charm》を4枚買ってきました。早速回します!
……あの魔除け、流石にトリプルシンボルはキツイんじゃと思ってたんですが……入るんですか!?入っちゃうんですか!? また、研究成果を聞かせてください!
おわりにかえて ~眞白井のひとこと~
今回、お話を伺わせていただいた若みどりさん……いえ、wkmidoriさん。
自分が2022年からパイオニアを追い始めてMOのイベント結果を見始めたとき、最初に当たった壁の一つが「このタイミングで【ロータス・コンボ】が勝った理由・ポイントが分からない」でした。
自分にあまりなじみのなかったオールイン型のコンボデッキ。微妙にメインやサイドが違うのは分かるけど、その先の「勝った理由」「強かった理由」が分からない……!!!
そう思っていた矢先、MOでよく見かける「ロータス・コンボのwkmidoriさん」が日本語圏プレイヤーさんだとひょんなことから知り、noteなどを拝見するようになったことをよく覚えています。
「【ロータス・コンボ】は環境を映す鏡だ!」
記事から「ロータス・コンボのリストは環境分析の賜物」ということ、意識されている点や現環境デッキへの強み・弱みを知ることが出来るようになってから、自分のパイオニア環境を見る目はまたひとつ変わることができました。
今回のインタビューで、初めて直接お話を伺う機会をいただいたのですが、改めて【ロータス・コンボ】への知見の深さに驚かされると共に、その知見を積み重ねる・試し続けることをとても楽しまれているんだな、と感じたことがとても印象的でした。
それはストイックにChallengeやPreliminaryで好成績を残し続けるこれまでの「wkmidoriさん」の姿と重なるとともに、変わり続けるパイオニア環境を最初期から楽しみ続け、そしてこれからも楽しみ続けるであろう「若みどりさん」の新しい一面を知った瞬間でした。
記事を公開するまでに少し時間がたってしまい、【ロータス・コンボ】は「TLS2023」のリストから、「カルロフ亭殺人事件」を経てまた新たな進化を遂げようとしています。
ですが、今回若みどりさんにお話しいただいた【ロータス・コンボ】についての基本的な考え方、そして何より「試し、楽しみ続ける」プレイスタイルは、新しい姿の【ロータス・コンボ】でも変わらないものかと思います。
【ロータス・コンボ】を使われている、そして挑戦されるの皆さんのご参考になれば幸いです!
改めまして若みどりさん、ありがとうございました!
次回予告と宣伝
「巧者に訊く」は、不定期企画として今後も続きます!
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それでは、また!