眞白井エイドです。
普段は、YoutubeでMtGパイオニアに関する配信や、Twitterでパイオニア週刊紙「週刊ふんわりパイオニア便り」を発行しています。
さて、この記事企画「巧者に訊く」は、パイオニア競技イベント/大型イベントで結果を残されたプレイヤーさん=【巧者】に、デッキやプレイ、あるいはバックグラウンドに関するお話を訊いてみよう!というインタビュー企画です。
今回は、2023年7月末に開催の「プロツアー指輪物語(バルセロナ)」の権利を獲得された、紫黒蔽さんにお話を伺いました。
眞白井とは、以前からスタンダード大会を通じてご縁があった方。
自分としてはクールでストイックな方なのかなと思っていたのですが、その裏には「あること」への並々ならぬ思いがありました。
それでは、本編をどうぞ!
自己紹介
まずは、自己紹介からお願いします!
実は、自分と紫黒さんは、以前からMTGAの配信者中心スタンダード大会「まじ☆すと」でご縁があるのですよね。
「まじ☆すと」でも準優勝されたり、複数回決勝ラウンドに抜けられていたりされていて、スタンダードでも非常に強いお方です。
カバレージのプロフィールでも「まじ☆すと」に触れていただいていて、運営メンバーとして嬉しいです(笑)
MTG歴は「ギルド門侵犯(2013年)」から。
普段は群馬周辺でプレイしていて、コミかるさんにお世話になることが多いです。
好きな色はグリクシス(赤青黒)、好きなカードは《死の影/Death’s Shadow》です!
ではずばり、今回出された成績をお願いいたします!
1日目 6-2-0
2日目 2-1-1
スイスラウンドは13位で、プロツアー権利を獲得しました!
初海外ということで、バルセロナまで行くか非常に迷ったのですが、色々な方にアドバイスを受けて、参加を決意しました。
おお! 初海外は色々大変だと思いますが、頑張ってきてくださいー!
デッキについて
では、今回使用されたデッキと、デッキをあまり知らない方向けの簡単な説明をお願いします。
ラクドス・サクリファイスを使用しました。
《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》《魔女のかまど/Witch’s Oven》《波乱の悪魔/Mayhem Devil》のシナジーで、ボードコントロールしていくデッキだと思っています。
《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》をパイオニアで一番強く使えるデッキです。
《寓話》の話、詳しく伺いたいです!
個人的な意見ですが……
まず、宝物トークンの価値がサクリファイスではものすごく高いです。
《波乱の悪魔》の誘発に、《命取りの論争/Deadly Dispute》のタネになります。
2章のルーターは、《大釜の使い魔》や余分な土地を捨てて有効牌を探せます。
《魔女のかまど》のみ盤面にある時に《大釜の使い魔》を捨てれば+1アドです!
また、土地はマナカーブの頂点が3マナなので、気軽に捨てられますね。
ラクドス・ミッドレンジやイゼット独創力は、3枚より多く土地が必要なので、ここの判断が難しいように見えます。
裏面の《キキジキの鏡像/Reflection of Kiki-Jiki》は、召喚酔いが解ければ速やかにゲームに勝てます。
《波乱の悪魔》《税血の収穫者/Bloodtithe Harvester》《不運な目撃者/Unlucky Witness》を主にコピーしますが、《波乱の悪魔》コピーは特に強力です。
また、《キキジキの鏡像》には、余っている《初子さらい/Claim the Firstborn》で速攻をつけることもできます。
土地を気軽に捨てられる話は盲点でした……!
《波乱の悪魔》コピーは本当に強いですよね。なんでコピートークンが生け贄なんだ……
ラクドス・サクリファイスは、いつくらいから使われているんですか?
サクリファイスというアーキタイプ自体は、スタンダードから数えると2019年くらいから使っていたようです。
パイオニアだと、(ラクドス・サクリファイスを)サイクル1の店舗予選(2022/07)から使っています。
サクリファイスマスターだ……!
パイオニアは1つのデッキをやり込むメリットが大きいフォーマットですが、旧スタンダードからとなると、積み重ねた経験値がすごそう。
では、パイオニアでもサクリファイスを選ばれた理由……ラクドス・サクリファイスの良い所・メリットを教えてください。
最大手のラクドスミッドに多少強いこと、クリーチャーデッキに強いこと、そして何よりデッキを回すのが楽しいことです!
楽しさは大事!
特に楽しいポイント・テンションが上がる瞬間ってどんな時ですか?
猫+かまど+悪魔のセットが盤面に揃ったときですね!
あとは《初子さらい》+《命取りの論争》or《魔女のかまど》で、アドバンテージを得ているときも楽しいです。
ファイナルのデッキとして選んだのも、使っていての楽しさを一番重視したから。
悔いの残らないようにしたかったです!
本当にサクリファイスがお好きなんですね……!
逆に、ラクドス・サクリファイスの難しい所・良くない所・デメリットはありますか?
個人的に難しい所は、《大釜の使い魔》を墓地に置いておくかの判断や、《命取りの論争》のタイミングでしょうか。
良くないところは、デッキの単体のカードが弱いこと。
デメリットは、スペル系コンボデッキや、エニグマ・ファイヤーズ/奇怪な具幻や5Cニヴ=ミゼット/Niv to Lightのような大振りのデッキに弱いことです。
最近のラクドス・サクリファイスは《思考囲い/Thoughtseize》が4枚採用されるようになってきたとはいえ、じっくりとプレイした先に勝ち筋があるデッキなので、確かに長引くと勝たれてしまうロータス・コンボや、カードパワーで押し切ってくるエニグマ・ファイヤーズ、《白日の下に/Bring to Light》系デッキは辛そうですね……
そういったところを含めて、サクリファイスは一般的に「線が細い」と言われがちかな?と個人的には感じているのですが、紫黒さん的にはどう思われていますか?
先ほども言った通り、デッキのカード1枚1枚のカードパワー(クロック)が低いですからねw
自分も使いはじめた頃は、線が細く何がなんでも1点を詰めていくデッキだと考えていましたが……
使っていくうちに、豊富な除去でボードコントロールしていくデッキなんだな、と感じるようになりました。
そのため、盤面度外視の攻めがあるロータス・コンボや奇怪な具幻が苦手という明確な理由も分かって来ました。
今では線の細いデッキだとは思いませんが、「線を太くする」コツをあえて言うとすると、
・相手に脅威を思わせたいなら、相手の盤面を空にできるときはする。
・《キキジキの鏡像》の召喚酔いが解けたらリーサルを考える。
・《命取りの論争》を相手の除去に合わせる
などだと思います。
クロックの積み重ねではなく、除去を積み重ねて相手をコントロールすることが本質、ということですね!
ここは自分も勘違いしていたところなので、知ることが出来てよかったです。デッキを見る目がだいぶ変わりそう。
ラクドス・サクリファイスは、「ボードコントロール」のデッキ!
リストについて
では、細かいリストの話に移りたいと思います。
一般的なリストと比較した際の、今回使用されたリストの特徴や工夫した点はありますか?
今回のリストは、kanister氏がdiscordで上げていたリストを、一枚だけ変えて使用しました。
なので、構築面で工夫した点はあまりありません。
強いて言うなら、サイドの《勢団の銀行破り/Reckoner Bankbuster》が一般的ではなく、中〜重めのデッキにサイドインできて強力だったくらいです。
ちょっとラクドス・ミッドレンジ的なカードといいますか、たしかに「ラクドス・サクリファイス」と聞いてパッとすぐに出てくるカードではないですよね、《勢団の銀行破り》。
ちなみに、元リストから1枚変えたのはどのカードですか?
サイドボードの《塵へのしがみつき/Cling to Dust》だったところを《未認可霊柩車/Unlicensed Hearse》に変えました。
イゼット・フェニックスを相手にするときは、1枚追放では足りなかったためです。
パイオニアの墓地対策はどれも微妙でした……。
パイオニアの墓地対策の取り回しの悪さは、たびたび言われていますよね。
1マナであることを優先するのか、2マナでも効果範囲が広いものを選ぶのか、触れる枚数を重視するのか……万能な物がないというか。
ラクドス・サクリファイスは《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》など、使えないものも多いので難しいですね。
では、具体的な仮想敵や、想定したメタゲームはありますか?
あまり新しいデッキは出てこないと考えていました。
仮想敵はラクドス・ミッドレンジ、ミラーマッチ、緑単信心、アゾリウス・コントロールを特に考えていました。不利マッチのイゼット・フェニックスが全然いなくて良かったです……!
なるほど、先ほどのリスト変更の話もありましたが、イゼット・フェニックスへはガードをやや上げられていたのですね。
実際にファイナルで回してみて、リストの感触はいかがでしたか?
リストの感触はとても良いので変えたくないですが、アブザン・パルヘリオンが流行るようなら《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》を減らすかもしれません。
友情コンボをしてしまいますからね(笑)
ラクドス・ミッドレンジ使いの方とのお話でも感じたのですが、《クロクサ》は強いけど最適なカードではない面があるな……と思います。
すぐクロックにならないところや、ハンデスが相手に決定権があるところとか。
かなり気に入られているリストとのことですが、ずばり、ベストカードは何ですか?
波乱の悪魔です!
やはりサクリファイスの屋台骨ですからね!
今回のイベントについて
では、今回参加された「チャンピオンズカップファイナル サイクル3」についての率直な感想をお伺いしたいです。
もうすぐ子供が生まれるのですが、子供が生まれるとしばらく大きな大会に出られなくなるので、デッキの話でも言いましたが、悔いの残らないようにしようと練習しました。
紙の大会でリスト公開制は初めてだったのですが、昔、MTG MeleeでのPTQの経験もあったので、スムーズにできて良かったです。
今回のファイナルは、自分が一番楽しく、そして強く使えるデッキで悔いが無いよう挑んだ大一番、ということだったんですね。
そこで手にしたプロツアー権利……感無量ですね。
今回のイベントでのベストバウトがあれば教えてください!
1回戦目の3ゲーム目で、アンタップイン土地を引いてライフを削りきれたときです。
他の試合も含めて、詳しくはnoteに書きました!
逆に、今回のイベントでの反省点や、次の舞台までに改善したい点はありましたか?
強いて言うなら体調管理ですかね……
久しぶりに友達と会えると嬉しくて、飲み行ったり夜更かししがちです。
楽しいのでやめられないですけどね(笑)
やー、自分もオフライン/テーブルトップのイベントが復活してから、知人友人の皆さんとコンベンションで会うのが本当に楽しみになってしまったので、気持ちはとても分かります(笑)
それまではMTGAで、1人もくもくとラダーを回して満足できていたんですけどね。
プレイについて =おわりに代えて=
紫黒さんのことにお話を戻すと……紫黒さんのTwitterでは、スタンダードからレガシーまで幅広くプレイされている様子が伺えます。そしてどのフォーマットでもお強い!
実際、広いフォーマットを遊んでいると、他のフォーマットへの学びや応用ってあったりするのでしょうか?
次のファイナルのモダンや、THE LAST SUNのパイオニア&レガシーなど……今後、他のフォーマットに手を出す必要がある競技プレイヤーの方も多いかと思うので、お伺いしたいです。
難しいですが……最近では、除去やカウンターを構えるか、自分の動きを優先するかのリスク・リターンですかね。
近年のカードパワーはすごくて、一手ズレるだけで負けることも少なくないです。
ここはどのフォーマットでも、わりかし応用がきくと思います。
特に紫黒さんは、グリクシスカラーがお好きということで、そのあたりのノウハウはかなり積み重ねられてそうですね!
ちなみに眞白井は、どの環境でもクロック高めの部族ビートダウンしか使ってないので、全く除去とカウンターのノウハウは積めていません!w 精進します……。
ラクドス・サクリファイスはどんどんと人気の高まっているデッキで、今後、デッキを新しく握る人も多いのかな、と思います。
紫黒さんから、これからデッキを握る人へのアドバイス、あるいは気を付けてほしい基本のプレイングなどがあればお願いします!
最初はなんか思ってたのと違うとか、猫かまど全然揃わないじゃんって感じると思いますが、分岐点がたくさんあって楽しいデッキなので、すぐに結果が出せなくても諦めないで欲しいです。
練習が大事です!
アドバイスとしては、マリガンは厳しめでやった方が良いですね。
(単体で機能しないカードが多いため)
……今回、紫黒さんのお話の中で、「楽しさ」が繰り返し出てきたのがとても印象的で。
そして、「プレイと経験の積み重ね」で、ラクドス・サクリファイスへの理解を深められた。
先立つ「楽しさ」が無かったら、「経験の積み重ね」の継続、そして今回のプロツアー権利獲得という大きな結果にもつながらなかったのかな?と個人的に思います。
あるいは、「経験の積み重ね」を繰り返す中で、デッキの「楽しさ」を見出せる、というのもあるのかもしれません。
自分としても、パイオニアは「デッキを極め得」のフォーマットかなと思います。
紫黒さんのお話が、読者の方が一つのデッキに真剣に向き合う・楽しさをモチベーションにデッキを極めるきっかけになれば良いな、と自分も思います!
では、最後になりますが、プロツアーへの意気込みをお願いいたします!
楽しむことを忘れずに頑張りたいです!
紫黒さん、たくさんのお話をありがとうございました!
眞白井のひとこと
自分も「強さ」よりは「楽しさ」でデッキを選びたいというプレイヤーで、ただ、自分の強さにも限界を感じることが多かったので、楽しさよりも地のパワーでデッキを選ぶべきなのだろうかと、悩むこともありました。
ですが、本当にまっすぐな「楽しさ」への思いが、今回のファイナルで紫黒さんを「巧者」にしたのだな……という片鱗をお伺いできて、尊敬の念と共に、自分も「楽しさ」と共に強くなろう!と背中を押された気持ちでした。
あらためて、紫黒蔽さん、本当にありがとうございました!
次回予告と宣伝
次回は、紫黒さんと同じく、チャンピオンズカップサイクル3 ファイナルで、ラクドス・ミッドレンジでプロツアー権利を獲得された、小原裕一郎さんにお話を伺います。
既にとても熱量の籠ったお話を伺えており、連載2回目にして早くも前・後編になりそうなほどになっています(笑)
掲載は7/25(火)を予定しています!
掲載報告をはじめ、TwitterとYoutube投稿にて活動に関する発信をしておりますので、ぜひフォロー・チャンネル登録をお願いします! 大変励みになります。
欲しいものリストも公開しておりますので、ご支援いただける方はよろしくお願いいたします…!
それでは、また!