眞白井エイドです。
普段は、YoutubeでMtGパイオニアに関する配信や、Twitterでパイオニア週刊紙「週刊ふんわりパイオニア便り」を発行しています。

さて、この記事企画「巧者に訊く」は、パイオニア競技イベント/大型イベントで結果を残されたプレイヤーさん=【巧者】に、デッキやプレイ、あるいはバックグラウンドに関するお話を訊いてみよう!というインタビュー企画です。
今回は、2025年10月11日(土)・12日(日)に開催された「第19期パイオニア神挑戦者決定戦/神決定戦(以下、神決定戦)」で、なんと前回の神陥落から最速のリベンジマッチを果たし!神の座へ帰還された宇都宮 巧さんにお話を伺いました。
使用したのは神の座にたどり着いた時と同じ【ラクドス・デーモン】。
ですが、そのリスト・そしてチューニングの裏には、並々ならぬリベンジへの熱意がありました。
そして、今回は実際の神決定戦でのプレイについても掘り下げてインタビューさせていただきました!
それでは、インタビュー本編をどうぞ!
挑戦者決定戦突破前に考えていたこと
宇都宮さんのプロフィールやMtG歴等、【ラクドス・デーモン】というデッキについては、前回の「巧者に訊く」に詳しいので、そちらを読んでいただいてからをおすすめいたします!

この度は、第19期パイオニア神就任おめでとうございます!
今回は、第18期で髙濵さんへ神の座を譲り渡してから最速のリベンジマッチということで、話題になりました!
ということで、今回はデッキの話よりも、第19期パイオニア神挑戦者決定戦/神決定戦(以下、挑戦者決定戦/神決定戦)にて宇都宮さんが考えていたことや、実際の神決定戦でのプレイに関して深堀りさせていただければと思います!

ではまず、前回の第18期パイオニア神防衛戦では【イゼット・フェニックス】を使用されておられましたが、この時に【イゼット・フェニックス】を選んだ理由を覚えていらっしゃる範囲で構いませんのでお伺いできますでしょうか?

前回は【ラクドス・デーモン】【イゼット・フェニックス】【赤単アグロ】の3強環境という認識でした。
その中で、【赤単アグロ】のみトーナメントで勝ち切る応用力が足りていないと考えていました。
【イゼット・フェニックス】は【赤単アグロ】以外には勝てるデッキだったので、【赤単アグロ】が来ないなら最適なデッキと考えて選択しました。

なるほど。お噂でも、宇都宮さんは【イゼット・フェニックス】を使い慣れていると伺っていたので、納得のチョイスです。
…ですが、挑戦者まで上がってきたのは【赤単アグロ】、かつ独自チューンで更に速度が速めのリストの髙濵さんだったということで、惜しくも防衛ならずとなった形でした。

そこから今回のパイオニア神に向けて考えていたことや、第19期に向けた思い・モチベーションはどのようなものでしたでしょうか?

PTでの友人達の活躍に触発されて、マジック全体へのモチベーションは高めでした。
一方で、神に再び挑戦することのハードルが高いことはわかっているので、パイオニア神に向けての特別な意識はありませんでした。

MSDの皆さんですね!
そして、あくまでフラットな意識で挑戦者決定戦に臨まれていたのですね。

ではそれを受けて、今回【ラクドス・デーモン】を使用された理由をお聞かせください。

のちの質問にも関わりますが、高濱さんは70%以上の確率で赤単だと予想していました。
なので今回の調整では、「赤単に勝てる」「トーナメントに勝ち抜ける」の2点を重視しました。

まさかの神デッキも狙いながらののチューニングだったのですか…!?

【スケープシフト】や【無限ウェブスリング・レジェンズ※】のようなコンボデッキも検討しましたが、最終的にリスト公開で戦う際に、赤単側に妨害の薄さを狙われて最大効率でプレイされることを嫌って、軽い妨害が多い【ラクドス・デーモン】という選択をしました。
※無限ウェブスリング・レジェンズ…「マーベル スパイダーマン」で成立した、《伝説の秘宝》とウェブスリング持ちクリーチャーを用いた無限コンボ。パイオニア神直近でMOの有名プレイヤー・claudioh氏によって研究されていた。

なるほど!
「赤単に勝てる」と「トーナメントに勝ち抜ける」を共存させるために、神に就任された際(2025/02末)に使われたものからリストはかなり異なっていたのですね。
第17期パイオニア神でのリスト(2025/02)
第19期パイオニア神でのリスト(2025/10)

他のトーナメントではありえないことですが、神決定戦では最後の神との対決に勝ってはじめて優勝と言えます。
トーナメントを勝ちやすい構成で挑んで神に負けてしまっては本末転倒なので、神のデッキを想定しそこから逆算でデッキを用意しています。
今回でいうと、通常のリストにおける《強迫》のスロットをサイドに移し、メインに除去を多くしたやや除去過多な構成にしています。
今回の挑戦者決定戦のSEは3連続で【アゾリウス・コントロール】で、調整したところがモロに悪い方面で影響する相手でした。

結果、運良く勝つことは出来ましたが、除去を引きすぎて劣勢になる展開もありましたし、仮にそれで敗北しても、それを受け入れて神に有利を取るという構成を目指しました。
…ちなみに後から思った点としては、《コーリ鋼の短刀》へのささやかな抵抗である《削剥》は、【赤単アグロ】相手はそこまで強いわけでもないので、いっそ黒い除去カードの追加にするべきだったと考えています。
【イゼット・フェニックス】にはどうせ勝てないため割り切ることを決めていたので、より対【赤単アグロ】に寄せてしまうべきでした。

まさに「決戦仕様」といいますか、「神を獲る」ことに特化されての挑戦だったのですね…!
そして振り返って「更に尖らせることができた」というお話が出てくるところにも、神決定戦に向けて特別な意識はなかったとはおっしゃられていましたが、自分としては宇都宮さんにとっての「神」タイトルへの思い入れが、前回お話を伺ったときよりもさらに強くなっているなと感じました。

ちなみに、今回の「対赤単決戦仕様」のリストについては、どなたかと調整したり相談したりというのはありましたでしょうか?
具体的には、解説で平山さんが「MSDで神独占計画」のお話をされていたので、裏でそういった調整もMSDさんの中でされていたのかな?と思ったのですが…。

今回は完全に一人でリストを作りました。
MSDのメンバーの大半は招待もあって、マジック大戦祭※に参加していたりしたので…。
神独占計画はありますが、地域CSくらいにならないとしっかりチームで調整はしないですね。
※マジック大戦祭…当日はスタンダード・モダン中心の大型インベント「マジック大戦祭」も開催されていた。

では、対戦相手となった髙濵さんについて、せっかくなのでプレイヤー・あるいは個人としての印象をお伺いしたいのですが、いかがでしょうか?

思い切りのよいアグロ使いという印象です。
なので、使ってくるデッキも70%以上で【赤単アグロ】。仮に【赤単アグロ】じゃなくてもアグロデッキの範疇という予想でした。

前回の対戦の時にも、かなりまっすぐ攻めてきた印象があります。
なので今回はハンデスや確定除去を駆使して、そういったゲーム展開にはさせないようにできました。

なるほど…そういった印象も含めて、対赤単決戦仕様のリストとプレイをイメージされたのですね!
挑戦決定後に考えていたこと

挑戦者決定戦では、先ほど話に出たとおり【アゾリウス・コントロール】との3連戦を抜けて挑戦権を獲得したわけでしたが、挑戦確定直後のお気持ちとしてはいかがでしたか?

調整の影響はありましたが、有利マッチ3連続というかなりの幸運に恵まれていたのでちゃんと勝ててほっとしました。

あのTop8に残られた皆さんも強豪ぞろいでしたからね…!
そんな方々の操るコントロールとの後のない3連戦、自分なら心臓が保つ気がしません…。

ですがそれを見事乗り越えての挑戦権獲得だったわけですが、リスト公開後に、どなたかとスパーリング等はされましたか?
また、髙濵さんのリストを見たりスパーリングを通じて考えを変えた・修正された部分などはありましたか?

MSDサーバー内で、画面共有で結構な人数に見てもらいながらスパーリングしました。
相手のリストに関しては、相手がインしてくるであろう物の予想とそれに対してどうするかを検討しました。

相手の動きを抑え続けて、《不浄な別室/Unholy Annex》のドレインか《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》のドレインでゴールするプランを立てていたのですが、アドバイスを受けて、ちゃんとクリーチャーを展開して殴り合えるようにすることと、《叫ぶ宿敵》と相討ちしてライフゲイン不可になることを恐れないことの2点を意識するようになりました。
本番でも、ライフを犠牲に3ターン目に《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》を置いて、裏面への変身が間に合って…という場面がありましたね。

MSDの強豪の皆さんに見守られてのスパーリング…すごく濃厚な時間そうです。
スパーリングの中でゲームプランの選択肢が広がり、そして実際のゲームでも活かされたというのは、周りの方に相談することの良さや複数名/チームでMtGをすることの強みを感じます!

スパーリングや周りへのご相談を踏まえて、正直、神奪還の自信のほどはいかがでしたでか?

自信はそこまでなかったです。
スパーリングで大分ボコボコにされてたので、一定以上の引きをされたらダメそうだなと思っていました。
結果、スパーリングより本番の(髙濵さんの)引きが渋くて耐えられましたね。

…ちなみにスパーリングのお相手はどなただったんでしょうか。
宇都宮さんをボコボコに出来るレベルで赤単を回せる方、気になります。

前日に平山君と当日に矢田さん※とやってもらいました。
※矢田さん…矢田和樹氏。X/Twitterでのハンドルネームはqtaro。プロチーム「BIGs」に所属しており、グランプリトップ8入賞複数回の他、第20期リミテッド神にも就任している。元パイオニア神・齋藤慎也さんのエクスプローラー(現MTGAパイオニア)でのArena Championship8の調整にも貢献された。

まさかの解説の。
平山さんは、スタンダードで【アゾリウス全知】でのスタンダード神就任と【イゼット大釜】での防衛、2024年のモダンでの地域チャンピオンシップでは【リビングエンド】でTop16と、最近はコンボ寄りのデッキを使われてきた印象が強いですが、アグロもお上手なのですね!
パイオニアの地域チャンピオンシップで優勝・準優勝された際はそれぞれ【ラクドス・ミッドレンジ】【アゾリウス・コントロール】だったので、何を握られても上手いのかもですが…。
神決定戦ゲーム各所について

では、リストについてのお話を伺えたので、次は配信アーカイブを拝見して、個人的にどのように考えられていたのか気になったプレイについてお伺いしていきたいと思います!

では早速ゲーム1から…。
先手でマリガンをかなり悩まれていたかと思うのですが、これは何で悩まれていたのでしょうか?


1マリガン後の7枚が土地3・《思考囲い/Thoughtseize》・《致命的な一押し/Fatal Push》・《逸失への恐怖/Fear of Missing Out》・《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》。
その中から、《思考囲い/Thoughtseize》と《逸失への恐怖/Fear of Missing Out》のどちらを戻すかを考えていました。

結局、タフネス3があるので《噴出の稲妻/Burst Lightning》で除去られず、信頼できる壁になることを評価して、《逸失への恐怖/Fear of Missing Out》を残すことにしました。
実際はドローで《税血の収穫者/Bloodtithe Harvester》を引いたので、先手で押していきたいことと捨てたいカードもなかったため、《税血の収穫者/Bloodtithe Harvester》からプレイしています。
ですが、《噴出の稲妻/Burst Lightning》で処理されて、相手に都合のいいターンを作ってしまったので、《税血の収穫者/Bloodtithe Harvester》捨てて《逸失への恐怖/Fear of Missing Out》からの方がよかったかもしれません。

髙濵さんも1マリガンだったので、除去が6枚の手札になければ、前もって考えていた「クリーチャーを展開して攻めていくプラン」が実現できたところでしたが…難しいですね。
後々の《キキジキの鏡像/Reflection of Kiki-Jiki》との相性も考えると、自分も《税血の収穫者/Bloodtithe Harvester》からプレイしてしまいそうです。

ゲーム2について。
《思考囲い/Thoughtseize》の後に、髙濵さんのトップから《熾火心の挑戦者》が出てきたかと思います。
解説では平山さんより「一番落としたかったカード」との評があったのですが、宇都宮さん視点でもやはり勝敗に大きくかかわるカードという認識でしたでしょうか。


(《思考囲い/Thoughtseize》で)公開された高濱さんの手札はかなり弱いものでした。
《熾火心の挑戦者/Emberheart Challenger》の登場は思ったより痛くなったなとは思いましたが、ゲームに大きな影響があるシーンではなかったです。また、ハンデスの優先度的にもそこまで高いわけではないです。
おそらく平山君も公開されたスペル2種と比べてはるかに強いカードがトップにあったから、それらと比べて一番抜きたいカードという意図かと思います。

除去も多めのリストでしたし、手札に強化呪文もなかったので後からでもなんとでもなるだろうと。

ハンデスの話ですと…ゲーム3からのサイドボーディングで、《思考囲い/Thoughtseize》を残されたかと思います。
「《思考囲い/Thoughtseize》は2点以上のトレードが出来れば得」というお話を解説の平山さんは配信でされていたのですが、宇都宮さん視点でもアグロ≒高速でライフを詰めてくるデッキに対する《思考囲い/Thoughtseize》のサイドイン/アウトについてのお話を良ければお伺いしたいです。

《思考囲い/Thoughtseize》は2点が痛く、1枚相手の手札を抜いても、時として相手の減速に繋がらないこともあるので、決して強いカードではありません。
一方で、サイドインされる《陽背骨のオオヤマネコ/Sunspine Lynx》は、盤面に出る前に可能であれば処理がしたいものでもあります。

また、《不浄な別室/Unholy Annex》や《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》といった、【赤単アグロ】に対してターンパスに近い性質のカードを複数引かないために優先的に抜きたいという事情もあります。
重なることは避けたいカードではありますが、【ラクドス・デーモン】はルーティング手段も豊富ですし、ハンデスで特定のカードを落とす価値が非常に高いマッチアップなので、デッキに残してタイミングを見てプレイするカードという位置づけになります。

「ハンデスは《陰謀団式療法》と思って撃て(=ハンデスするカードを具体的に思い描いて唱える)」という至言はありますが、まさに自分のゲームプランが通せるよう、ライフというリソースとも相談しながら最高の成果を狙って唱えるのが肝要、というわけですね。
前回お話を伺った際も、【ラクドス・デーモン】の難しさとしてライフ管理のお話が出てきていましたが、【赤単アグロ】とのマッチアップではさらにそれがシビアになるので、「2点のライフを相手のどんな損を生み出すために費やすか?」という意識が大事になりそうだと思いました。

《思考囲い/Thoughtseize》のお話を続けて。
ゲーム4で、1ターン目・2ターン目の《思考囲い/Thoughtseize》で、ともに《ウラブラスクの溶鉱炉/Urabrask’s Forge》《陽背骨のオオヤマネコ/Sunspine Lynx》といった、いわゆる「対ラクドスデーモンカード」を落とさないプレイをされていたかと思います。
こちらの意図をお伺いできますか?



《ウラブラスクの溶鉱炉/Urabrask’s Forge》は、カードの性質上出来るだけ早くプレイする必要があります。
最速で出てきた場合、自分の手札的に《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》の返しで出てくることになり、ブロックしたのち初手から持っていた《削剝/Abrade》で破壊するというプランが見えていたため、抜かずに放置しました。
ただ【ラクドス・デーモン】側が先手のゲームでは、《ウラブラスクの溶鉱炉/Urabrask’s Forge》のトークンよりスタッツが大きいクリーチャーが盤面にあることが多いので、仮に《削剝/Abrade》が無くても抜かない可能性も十分あります。

たしかにいま見返してみると、先ほどお話にあった髙濵さんのプレイスタイルやリストの特徴とも合わせて、1マナの《雇われ爪》を落とすことでテンポ損をさせる方が、《ウラブラスクの溶鉱炉/Urabrask’s Forge》をのちのちのために落とすよりも価値が大きいように見えますね。

《陽背骨のオオヤマネコ/Sunspine Lynx》に関しては正直落としたいカードで、2回目の《思考囲い》で落とすつもりでしたが、3ターン目には《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》をプレイしたいことと、除去が《削剥/Abrade》しか無いということで、あの場面では《叫ぶ宿敵/Screaming Nemesis》の方が危険でした。
上にも書いた通り、3ターン目には《ウラブラスクの溶鉱炉/Urabrask’s Forge》を出してもらって、それが仕事をしない間に盤面を優勢にしたかったので仕方なく《陽背骨のオオヤマネコ/Sunspine Lynx》を残しました。
またこちらが《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》のトークンで殴れる状況にできそうだったので、(宝物があるため)土地を最低限の枚数しか置かずにプレイが出来そうな状況でした。

《陽背骨のオオヤマネコ/Sunspine Lynx》、土地が4枚なら4点で済みますからね!

サイド後はハンデスする優先度が非常に高いカードでしたが、以上の理由であの時は抜かないことにしました。

いや~…お話を伺っていると、「ゲームプランを事前に考えること」「ゲームプランをその場で修正すること」、この両方にハンデスカードは関わってきて、逆に言えばこの2つが考えられていないと効果的に使えないのだな…としみじみ感じました。
カードの絶対的評価だけでなく、「やりたいゲームプランを目指す際の相対的評価」を明確にして妨害することが要というか。
「あの場面では《叫ぶ宿敵/Screaming Nemesis》の方が危険」「《ウラブラスクの溶鉱炉/Urabrask’s Forge》を出してもらって」というお言葉からは、それが強く伺えました。

自分はまだハンデスが撃ちなれていなくて(笑) 反射的にサイドインされたカードや強いカードを抜きに行ってしまうのですが、その手前の自分の強いゲームプランの考えが甘いからこういうことをしてしまうのかなと自省した次第です。

ここで、今回は髙濵さんにも同時インタビューをしているということで、髙濵さん側にお伺いしたお話に絡めたご質問をさせていただきたいのですが…
髙濵さんが想定していたラクドス側のサイドプランとして、
「《思考囲い/Thoughtseize》を全部抜くパターン」
「《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》を全部抜くパターン」
「一つ目と二つ目の折衷案」があるとのことでした。
当日の配信ではお二方のサイドインアウト内容のアナウンスはなかったと記憶しているのですが、実際に宇都宮さんはどのようなサイドボードをされたのでしょうか?
また、それぞれのパターンについて、宇都宮さん側からの視点のお考えもお伺いしたいです!

後攻で
・《神々の憤怒/Anger of the Gods》2
・《苦痛ある選定/Anoint with Affliction》2 をイン
・《強迫》1
・《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》1
・《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》2 をアウトだったと思います。
アウトは《思考囲い/Thoughtseize》1・《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》1だったかも。どっちも検討していて実際どうしたかは覚えて無いです。

先攻では
・《苦痛ある選定/Anoint with Affliction》2のみをイン
・《強迫》1
・《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》1 をアウトしました。

《強迫/Duress》はカードが落とせなかった時が致命的です。
残すプランも検討しましたがスカった時のリスクが許容できず、先後問わずアウトしています。

残りはゲームを決めるけど、活躍のタイミングが遅い《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》を必要な分アウトしました。
《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》が手札で被ることは避けたい。
《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death’s Hunger》は《変わり谷/Mutavault》の関係で、脱出コストの(B)(B)(R)(R)支払いに信用が置けない。
でも、デーモン・トークンからの切り返しはプランとして特に先手は計算したい。
…ということを考えて上記のインアウトにしています。
《思考囲い/Thoughtseize》アウトのパターンは、《思考囲い/Thoughtseize》が重なりすぎるのを減らしつつ、《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》が引けずに切り返しが遅くならないようにです。

ルーティングが多い【ラクドス・デーモン】だからこそ1~2枚のイン・アウトが効果的、というかたちでしょうか。
そして、《思考囲い/Thoughtseize》を全部抜くパターンは想定されていなかった、と…。

《思考囲い/Thoughtseize》を全て抜くのは、個人的にはあり得ないと思います。
《陽背骨のオオヤマネコ/Sunspine Lynx》が1枚も採用されていないことが分かっているのであれば理解出来ますが、最近のリストではメインに枚数多く入っているのが普通なくらいです。
事前の質問で答えた通り、《陽背骨のオオヤマネコ》で詰むことを防ぐ・相手のプランを確認する・そもそも2点分より仕事するカードと交換できることが多いという理由で、《思考囲い/Thoughtseize》を全て抜くプランは自分はやらないと思います。

《不浄な別室+祭儀室/Unholy Annex+Ritual Chamber》を全て抜くパターンですが、今回はこの思想に近いです。
3マナで2点食らう置物はあまりこのマッチアップには合っておらず、そこまで引きたいカードではありません。
ただ、《祭儀室/Ritual Chamber》のデーモン・トークンスタートで反撃を開始できた場合は勝利までの速度が非常に早く、重ならなければいいので全部は抜かないかなという感覚です。
これはサイドインするものの枚数でも変わるので、リスト次第では全て抜くこともあり得ると思います。

折衷案ですが、これもまたあり得ると思います。
《思考囲い/Thoughtseize》には役割はあるものの、複数打ちたいことは稀です。
1、2枚減らす可能性はあるので、これもまたサイドインしたいカードの枚数によるということになります。
ただ、個人的な好みの話をすると、役割があるカードを全て抜くのは嫌いなので全抜き系のサイドボーディングはあんまりやらないですね。
明確に要らないものであれば全抜きしますが、ある程度の役割があるものは残すのが好みです。

自分は結構全抜き系のサイドボードをどのデッキでも考えがちなので、宇都宮さんのサイド論を伺ってみてかなり新鮮でしたね。
髙濵さんも、全抜きをしないプランは「嚙み合うようにプレイすると本来の【ラクドス・デーモン】のポテンシャルを引き出すことが出来る」とおっしゃっていたので、先述したゲームプランのお話を実践できるからこそ、本領発揮できるサイドボーディングなのかもとも思いました!
閑話休題①「巧者」のこだわり

個人的に、テーブルトップ対戦の華はそれぞれのプレイヤーさんがどんなカードやサプライを使っているか見られるところだと思っています。
今回の神決定戦の配信でも非常に華やかな盤面が出てきていましたが、宇都宮さんのカードやサプライのこだわりポイント・お気に入りポイントがあればお伺いしたいです!

スリーブ等についてはそこまでこだわりがありません。
大会ごとに新しいものに変える事と、手が痛くならないようにマットな奴の方が好きというくらいです。

イラストについては英語版であることと統一感があることが実は最優先で、絵柄は自分が納得すれば絵違いにはこだわらないというルールでやっています。
例として、通常のイラストで拡張版のものとかは、発売され始めた当時英語版の在庫がほぼ無く、今後全部揃え続けることが困難だなと思って買わないようにしています。

全体的にフルアートが好きですが、中でも「Unfinity」のギルドランドや「久遠の終端」の星景ランドのような宇宙っぽいイラストは好きです。
他にも「Zendikar Expeditions」も枠がすごい好きで、可能な限り揃えようとしています。


自分はフルアートの土地からはいいマナが出る教に入っているのですが、宇都宮さんの土地は配信で拝見していて本当にこだわられてるな~と感じていました!
いただいたお写真も栄養価が高いですね…自分も《魂の洞窟/Cavern of Souls》はZendikar Expeditions版か指輪物語版かでそろえるときにとても迷いました。


このスクリーンショットの場面も、《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》ショーケース版・《逸失への恐怖/Fear of Missing Out》ショーケース版・《思考囲い/Thoughtseize》Secret Lair版…とかなりぜーたくです。
あとは個人的には「小道」シリーズのボーダーレスも今集めるの大変なので、揃えられててうらやましいです…!
パイオニアについて、そして神からのメッセージ

競技フォーマットから外されて久しいパイオニアですが、それでも今回の神挑戦者決定戦も128名越えとまだまだ根強い人気を持っているフォーマットだと(勝手に)思っています。宇都宮さんとして、パイオニアにはいまどんなお気持ちをお持ちですか?
あるいは、気持ちや向き合い方について、神就任・再就任を経て変わった点があればお教えください。

パイオニアに関しては、「モダンホライゾン」が入る前のモダンのような立ち位置になっていると思います。
環境の変化も緩やかですし、様々なタイプのデッキが存在しています。
競技フォーマットではないからこそ、たまにやった時に以前と同じ感覚で同じデッキを使えるというのは大きな魅力に感じます。
神に戻った以上定期的に触る機会が来ますので、新しいデッキとかが出てきたら漏らさないようにはしておきたいですね。

「「モダンホライゾン」前のモダンみたい」というパイオニア評はよく聞くようになったものの、当時を知らないので少しピンときていなかったのですが、具体的に『たまにやっても同じ感覚で同じデッキが使える』と伺うと、ふらっと立ち寄って好きなデッキを使えるフォーマットというのは仰る通り魅力的だと思いますし、もうそれはパイオニア独自になってしまったという感じもしますね。
自分としても、その視点もきちんと持ってパイオニアの魅力を発信していきたいと思いました!

そして、宇都宮さんなどなど、パイオニア神に挑まれるプレイヤーさんが最新デッキを見逃さないよう、自分も情報収集と発信、頑張っていきたいと思います!

では…最後の質問はあえてシンプルにさせていただきたいと思います。

パイオニア神として、これからやってくる未来の挑戦者の方にメッセージをお願いします!

かなり迷いましたが…
負ける気はありませんが、万が一負けても化けて出て戻ってきます。
その覚悟で倒しに来てください。

もうこの座は譲らないから全力で挑んで来い、そして負けても何度でも取り返しに来るから準備しておけ!というわけですね!

かつてのパイオニア神の松原さん、あるいはリミテッド神の高橋さんのような「長く神に就かれた方」も珍しいですが、「すぐに神の座に帰ってきた方」も珍しいと思います。
自分としてはそういった『看板』を張っていただけるような「神」の方がいらっしゃると、挑みがいがある!ということで神決定戦も盛り上がってくれるかな?とも思いますので…
今後ともご活躍、応援しております!
おわりに
(お礼パートが入ります)
次回予告と宣伝
ということで第19期パイオニア神・宇都宮 巧さんへのインタビューでした!
また、今回は「最速のリベンジマッチ」という異例の神決定戦ということで、対戦相手である第18期パイオニア神・髙濵 真之介さんにもインタビューさせていただいております!
こちらもぜひ!セットでお楽しみください
(リンク)
今後も、「巧者に訊く」は不定期企画として続きます。
「この方の話を聞きたい!」「このデッキの話を聞きたい!」などありましたら、#巧者に訊く や引用RT、お問い合わせフォームからお教えいただけますと非常に参考になります!
また掲載報告をはじめ、X/TwitterとYoutube投稿にてパイオニアに関する活動の発信をしておりますので、ぜひフォロー・チャンネル登録をお願いします! 大変励みになります。
もしご支援いただける方がいらっしゃいましたら、下記のページよりよろしくお願いいたします…!
それでは、また!


