【更新記録】
2025.06.10.
《簒奪者、アーデン》《フェニックスのドミナント、ジョシュア》の継承史周りの話を追記、頂いた反応の項を追加しました
眞白井エイドです。
普段は、YoutubeでMtGパイオニアに関する配信や、Twitterでパイオニア週刊紙「週刊ふんわりパイオニア便り」を発行しています。
さて今回は、FFコラボこと「マジック:ザ・ギャザリング-FINAL FANTASY(以下、FFxMtG)」に関する記事です。
自分はFFについてはほとんど知らず、「チョコボと魔法の絵本」で無限にポップアップデュエルを回していたタイプの人間なのですが、先日参加させていただいたプレリリースやプレビュー期間にFF経験者の知人・友人から色々聞くうちにたくさんのFFのみなさんが気になるようになりまして、そのみなさんをMtG側はこんなカード/効果なんだよ~という解説も交えながら紹介していきたいと思います。
せっかくなら、コラボさせて頂くだけでなくFFファンのみなさんに何かお返ししたいな~というのもあります。初見の新鮮な感想って多分どの界隈でもいい栄養だと思うので。
ちなみにタイトルは、MtGを知らないFF勢のジスロマックさんのFFxMTG開封記事タイトルをリスペクトさせていただきました。
まったくこちらの存在を知らず記事を書き始めたのですが、自分と逆の立場からもFFxMtGを楽しまれている方が居るというのが分かって本当にうれしかったです!
こちらの記事も、FFxMtGの魅力が詰まった素敵な記事ですので、ぜひ!
そもそも「マジック:ザ・ギャザリング-FINAL FANTASY」って?
30年以上の歴史を持ちTCGの原点といわれる「マジック:ザ・ギャザリング(以下、MtG)」と、日本が誇るRPGの王道・「FINAL FANTASY(以下、FF)」さんとの超・大型コラボカードセットです。
これまでもMtGは「ユニバースビヨンド」というゲーム内ブランドで、MARVEL・指輪物語・アサシンクリード・Doctor WHO・Falloutなど海外IPを中心にコラボをしてきたのですが、これらは特殊なセットとして収録されており、カード枚数も通常のセットより少なめだったり、使えないルール(フォーマット)が存在したりしたのですが……今回は基本的にすべてのルール(フォーマット)で使える「本流のカードセット」でのコラボ!
MtG側は無論のこと、FFさん側も非常に力を入れていただいており、販売前から盛り上がっていたのですが、6/7から「プレリリース」という先行体験期間にはいり、実際にMtGのカードとして触って遊んでみるとこれが過去のカードセットと比べてもめちゃくちゃ面白い!!! そしてFFさん側の魅力をビシバシ感じる!!!
ということで、FFみりしら勢からMtGを通じて気になったみなさんを挙げてみよう!と思った次第です。
MtG・FFさんそれぞれの特集サイトはこちら。

気になったみなさん
《簒奪者、アーデン》

まず、MtGプレイヤー的には「エルダー」というクリーチャー・タイプがとても気になりました。
クリーチャー・タイプは「このカードのキャラクターはこういう属性を持っているよ」という、ゲーム内のシナジーだけでなく背景ストーリー上での設定も示すカードのルールテキストです。
そして、この「エルダー」はそうそう簡単に持てるものではありません。
MtG世界で「エルダー」を持っているのは、MtGのラスボスの代表格・ニコル・ボーラスや、とある世界(次元)を統べる龍王、とある世界で最初の魔法を極めたドラゴン、策謀を巡らす悪魔の中の悪魔たち……と、MtGの背景ストーリーに深く関わる、悠久の時を生きてきたとんでもない面々ばかり。
これまでのコラボカードセットでも、TRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」で最大級の脅威度を持つドラゴンしか「エルダー」を持ったクリーチャーは出ていない、という点からも、「エルダー」の希少さ・そして「人間」が「エルダー」を持っているということの驚きが伝わるでしょうか。


そして能力もびっくり。
「人間」なのに「デーモン」を支援する能力を持ち、そして墓地からあらゆるクリーチャーを「デーモン」に変えてどんどん戦場に出す能力を持っています。
過去にも「デーモン」とシナジーする「人間」のクリーチャーはいましたが、直接「デーモン」を強化する・新たに能力を与えるカードはおそらく初です。

「デーモン」はそのまま「悪魔」を表すクリーチャー・タイプで、同じ悪魔系の「デビル」とは「カード色が黒中心(デビルは赤)」「とてつもないアドバンテージ能力と対価であるデメリットに関する能力を持つことが多い」という点で区別されています。
だいたい「デビル」より「デーモン」の方がやべーカードが多いです。

そしてそんなやべーデーモンたち、当たり前ですがそう簡単に出てこられたらゲームがつまらなくなってしまうので、クリーチャーを唱える(戦場で戦える状態にする)のにかかるコスト=マナ総量が大体とんでもない量に設定されています。
マナ総量は上の画像の右上のところに書いてあるやつですね。
上の画像の場合は、《グリセルブランド》が4+黒4つの8マナ、《ラザケシュ》が5+黒3つの8マナ、《ヴァルガヴォス》が6+黒3の9マナです。
彼らのような、唱えられたらゲームが終わるレベルのデーモンたちは、おおむね7マナ以上にマナ総量が設定されており、唱えるのには非常に時間がかかるのが普通です。
そして《アーデン》さんですが……。

5+黒マーク3つの8マナ。人間なのに「ゲームを終わらせるデーモン」相当のマナ総量を課せられています。
逆に何で人間なの???????????レベルです。
ちなみに記事執筆時点で8マナ以上の人間・クリーチャーは《アーデン》含めて7枚だけ!
うち3枚は何かしらで軽く唱えられる・戦場に出せる能力を持っています。
そして能力に書いてある「墓地」。
これは使い終わったカードや死亡したクリーチャーが行く領域で、「自分」「対戦相手」で分かれています。
そして《アーデン》は自分だけでなく、対戦相手の墓地からもクリーチャーを「デーモン」に変えてこちらのものとして出してきます。無法です。
MtGにも、墓地からクリーチャーを別のクリーチャー・タイプに変えて蘇生するキャラ・カードは複数いるのですが(ゾンビにして蘇生する魔法使いとか)、相手の墓地からもクリーチャーを奪え、かつこちらが攻撃を始める前のタイミングでそれを行い、それがすぐに攻撃してきて(=速攻を持つ)、対戦相手はその攻撃を防ぎづらく(=威迫…2体以上のクリーチャーを差し出す必要がある)、なんかこちらは回復し(=絆魂を持つ)、それを自分のターンに毎回できるというのは破格中の破格の性能です。
そんなとんでもねえ能力を、先述の通り「エルダーの人間(デーモンではなく!)」が持っており、その能力に与えられたフレーバー語……原作での能力名などを反映するテキストが「星の病」。
絶対このおじさまなんかあるやろ~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!がもうビシバシ伝わってきます。強キャラ感がもうすさまじいです。
というか星の病気で墓地(死の世界や地の底でしょうか?)からどんどんデーモンが出てくるの、なんかFF15の世界やばくないですか???というのも伝わってきます。何が起きているんだ。ちょっとしたバ○オハザードのデーモン版ではないのか?
そしてそんな世界を車で旅して魚釣りとか自撮りとかしていて大丈夫なのか??????




さらに言えば、FF15の主人公《ノクティス》くんは《アーデン》と共通の「人間・貴族」を持っていて、こちらは普通の人間なのね、ということだったり。
でもノクティスくんも「自分の墓地からアーティファクトを戦場に戻す」能力を持っていて、
クリーチャー/アーティファクト、
墓地なら何でも/自分の墓地だけ、
コストの支払い不要だしライフが回復する/コストの支払い必須だしライフが減る…と、「墓地から戻す」は共通ながらも、《アーデン》と方向性が対極なような印象を受けたり。
なにか2人には因縁が…?と想像できてしまいます。
…ということで、FFみりしらのMtGプレイヤーでも、こんな感じでカードのテキストからめっちゃFFさんの世界に思いを馳せられるわけです! すごくないですか?
これもMtGの魅力の一つ、そしてなによりMtGにそうさせるFFさん側のパワー!ということで、こんな感じで語っていきます。
2025.06.10.追記
継承史カードの確認をすっかり忘れていました。
ということでFF15の継承史カードはっと……

アーデンさんデーモンになっとるやんけ!!!!!!
ということで、アーデンさんがあてがわれているカードは《血空の主君、ヴェラゴス/Varragoth, Bloodsky Sire》。
北欧をモチーフにした世界(カルドハイム)に居る伝説のデーモンです。

なおカードとしてはボディ弱め
彼のいる世界は10の小さい世界(領界)に分かれており(北欧神話設定そのままな感じですね)、その中にはデーモンが多く暮らす小世界(イマースターム)と人間が多く暮らす小世界(ブレタガルド)があるのですが、作中ストーリーの100年前にデーモンの小世界から人間の小世界に脱出し、そこのならず者を束ねて人間の小世界の本拠地に進軍、道中で目にした者を一人残らず虐殺していったという割ととんでもねえお方です。
ちなみにその時の出来事が「英雄譚」として《血空の虐殺/The Bloodsky Massacre》というカードになっています。
FFxMtGでは「召喚獣」の表現で使われている英雄譚ですが、最初からクリーチャーだったわけではなく、こういった「過去に起きて語り継がれている出来事」を表現するカード・タイプでした。

このカードの場合は、
「Ⅰ章:デーモン・狂戦士トークンの生成=ヴェラゴスがやってくる」
「Ⅱ章:狂戦士が攻撃するたびカードをドロー&ライフ減少=ヴェラゴスとならず者たちが侵略と略奪をする」
「Ⅲ章:狂戦士の分だけマナが増える=ヴェラゴスとならず者たちが戦利品を獲る」
…みたいなことを言い表している感じかな?と思います。
《ヴェラゴス》に話を戻すと、まあこれだけ暴れましたので世界の主神たちによって討伐隊が組まれ、1ヶ月かけてなんとか《ヴェラゴス》をデーモンの小世界に追い返すことに成功。
その後、デーモンの小世界は、《ヴェラゴス》含めてデーモンたちが出られないような封印をされました。
…しかし作中ストーリーで、世界全てに動乱を起こそうとする悪役「ティボルト」によってその封印は解かれてしまい…? といったところがMtG世界での《ヴェラゴス》に関するストーリーです。
もしかしたら、後述のエメトセルクさんと同じく、この辺りの《ヴェラゴス》のストーリー設定もアーデンさんに重ねられているのかも?と思いました。
もしそうなら、封印で長い時を過ごした=エルダーはちょっと納得感があります。
ちなみに、《ヴェラゴス》のテキストに書いてあるこちらの一文。
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分のライブラリーからカード1枚を探す。その後、ライブラリーを切り直し、そのカードを一番上に置く。
こちらの能力、MtGのサーチカード…デッキから自分が選んだカードを持ってこられるカードの中でも最強格の一枚とされる名カード・《吸血の教示者/Vampiric Tutor》と同じというネタもあります。

流石にないかもですが、《吸血の教示者/Vampiric Tutor》側のフレーバーテキストやイラスト(教え子の血で秘密を彼に教えている)まで踏まえていたらすごいですね。
《フェニックスのドミナント、ジョシュア||火の召喚獣、フェニックス》

まずこちらのカード、「両面カード」となっております。
両面カードはその名の通り、2つの別の効果のカードを表裏で張り合わせたようなカードで、「表(第1面)」と「裏(第2面)」の概念があります。
そして、一定の条件で表から裏になったり、裏から表に戻ったりします。
そして、こちらの《ジョシュア》くんを始めとした「ドミナント」って名前についている皆さん…全員、裏が英雄譚・クリーチャー=召喚獣ですね?
ですが、他の召喚獣は最終章で生け贄になる=消えてしまいますが、「ドミナント」の皆さんの裏面はちゃんと「表面で戦場に戻す」ようになっていますね?

そして裏面…クリーチャー・タイプ欄から「人間」がちゃんと消えていますね?
さては「ドミナント」の皆さん、必殺技で一定時間異形の召喚獣に変身できる特別な人間なんじゃないですか!!?!?!?!?!(大好物の設定)
さらに言えば、もしかしたらFF16の世界は「召喚獣」がレアな存在なんじゃないでしょうか?
なぜかというと、他のFFシリーズの召喚獣はどんなに強そうでも「伝説」のカードタイプがほとんどついていなかったのですが、ドミナントの皆さんの裏面は「伝説」が残っているんですよね。


こちらは消えるタイプの召喚獣だし…
あと、今回は珍しくパックに《荒地/Wastes》というあまり収録されない土地が入っているのですが、それがFF16出典とされていて。

この《荒地/Wastes》という土地は色のついたマナが出ない土地であり、MtGでは「荒廃した世界」「別の存在にエネルギー(マナ)を奪われた世界」を舞台としたカードセットで登場することが多いです。
過去のコラボセット/ユニバース・ビヨンドでは、暗黒の宇宙戦争の世界を舞台にしたテーブルゲーム・WarHummer、核戦争後を舞台にしたゲーム・Falloutとのコラボで刷られました。まあどちらも荒んでいます。

なのでもしかしたら、FF16の世界は魔力が少ない世界で、召喚獣は土地や魔法のアイテムから呼び出すのではなく、「人間の内なるエネルギーから召喚・変身する存在」なのかな~と思ったりしたわけです。
いいですね。ちなみに眞白井は「ジョジョの奇妙な冒険」が大好きです。
あとは《火の召喚獣、フェニックス》は癒しの能力=ライフ回復(絆魂)と蘇生(第3章能力)を持っていますが、《ジョシュア》さん自身はクリーチャー・タイプが「人間・貴族・ウィザード」で、回復役のキャラクターがあてがわれることが多い「クレリック」ではないことから、純粋なヒーラー役・支援役というよりは意外と攻撃も出来る方なのかなと思ったりしました。
なので自分の能力/召喚獣の力とのギャップとかに悩んだりすることもあるんだろうか…妄想がはかどりますね。
なんなら《クライヴ》さんの特殊絵版のフレーバー・テキストがそんな感じですし。

……あれ。《イフリート》も「火の召喚獣」なんだ。勝手にFFの召喚獣って属性と1対1対応なイメージがあったのですが。
そう考えると「どちらが本当の『火の召喚獣』なのか?」みたいな話もストーリーであったりするのかな…?
あとはMtGには「サイクル」という概念があり、似たような効果を持つカードがMtGの属性5色…白・青・黒・赤・緑に1つずつ割り振られるということがあります。
今回は「○のクリスタル」がサイクルカードですね。
白=風、青=水、黒=闇、赤=火、緑=土で振られています。

6マナ起動ですごいことが起きるが共通要素
ですが今回の「ドミナント」の皆さんは白の《ディオン/バハムート》、赤の《クライヴ/イフリート》、青の《ジル/シヴァ》、白赤の《ジョシュア/フェニックス》の4枚だけで、黒と緑に相当する方が収録されていないのですよね。
黒の召喚獣といえば「オーディン」、緑の召喚獣といえば「タイタン」なのはポップアップデュエルで学びました。
FF16の世界のオーディン・タイタンを持つ人はいるのか、はたまたいないのか。気になります……

……これ、相手タイタンじゃね????????
2025.06.10.追記
こちらも継承史カードの確認を忘れていました。お、…愚か!

めっちゃ露骨にオーディンの人いるやん。
ちょっと面白いのが、FF16の継承史カードはすべて「共闘」という能力をもっていることです。
「共闘」は、統率者戦という特別なルールでしか発揮されない能力。
統率者戦は、自分の相棒枠のカードを「統率者」として指定し、統率者に関わる色のカードしか採用できない&同じ名前のカードは1枚しか入れられないという縛りでデッキを組むルールになっています。
「統率者」は手札以外の場所から(ちゃんとマナコストを支払えば)唱えられ、また除去されても何回でも唱えることが出来るという特別なクリーチャーです。
そして普通、統率者は1枚しか指定できないのですが…「共闘」を持ったカードは同じく「共闘」を持ったカードと組み合わせて2枚セットで統率者に指定することができます。
なのでこの場合だと共闘するのはベネディクタさんとバルナバスさん、みたいな感じになるので、「召喚獣とドミナントは一心同体=共闘」とはちょっとニュアンスが変わってくるのですが。言葉遊び的な感じかもですね。

こちらにもクライヴさんがいるのか~。
となると上に挙げた画像の3人は、新カードとしては収録されなかった仲間たちって感じなんですかね…?
《オリジナル、アシエン・エメトセルク||最古の魔道士、ハーデス》

めちゃくちゃ人気なヴィランという噂は伺っています。自分はカード性能的にもとても気になっているお方です。
知人から、友人さんが「無限回収する」と言っていた話を聞いてビビりました。
そして改めてテキストを読んでビビりました。
あなた、「エルダー・ウィザード」なんですね?
基本的に、MtGのクリーチャー・カードたちは、「自分の種族」+「持っていれば自分の職業」というクリーチャー・タイプを持つことが多いです。《ミッドガルの傭兵、クラウド》が「人間・兵士・傭兵」であるように。

しかし《エメトセルク》さんは、「エルダー・ウィザード」。
《アーデン》さんの項で語ったように、「エルダー」は特別なクリーチャー・タイプであり、そして種族無しで「ウィザード」を持っているクリーチャーはMtGでも珍しいです。

今回収録の《ビビ》も種族無しの「ウィザード」なので、FF世界だとウィザードだけの存在はままあるんだろうな~…と思いつつも、《エメトセルク》さんは《ビビ》みたいな見た目じゃなくてめっちゃ人間の外見なんだよなあ。

なので何らかの理由で人間の形を取っている、あるいは人間であることを捨ててしまった存在なのかなと思いました。
裏面も非常に印象的なテキストを持っています。

「あなたのターンの間、あなたの墓地にあるカードをプレイしてもよい。」
これはMtGで最強のカードの一つとされる、《ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will》と同じ効果です。

カード名の「ヨーグモス」はMtGの強大な悪役・諸悪の根源の1人。
その名を冠したMtGでも伝説的なカードのテキストを与えられているのは、《エメトセルク/ハーデス》さんは相当特別で強大なヴィランの方なんだろうな…と推測できます。
逆に言えば、「なぜ《ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will》を渡されたんだろう?」というのも気になります。
MtGには伝説的なエピソードを持つ過去の強力なカードはごまんとあります。
墓地とリソースに関わるなら毎ターンクリーチャーを墓地から出していく《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》、墓地を山札にしてしまう《パラダイム・シフト/Paradigm Shift》もありますし、「ヨーグモス」に関わる強力なカードならライフを手札に変えてしまう《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth’s Bargain》もあります。



まあスタンダードで許されるラインが《ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will》だけしかなかったというのであればそれまでではあるんですが。
……それでも、通常版裏面のフレーバー・テキストが気になったんですよね。

「この身が消えたら、どこへ行くというのだ……私たちの記憶は……執念は……希望は……絶望は……!」
実は「ヨーグモス」も最初は人間なのですが、最終的には人間の姿を失ってしまい、彼が支配していた世界(ファイレクシア)を破壊されたのちに巨大な暗黒の雲(《Toxic Deluge》イラストの上部)となって主人公・ウルザたちに襲い掛かり、《名誉回復/Vindicate》初版で描かれているシーンで、仲間の一人・ジェラードの犠牲によって完全に消滅させられます。


「私は雨よりも地の恵みよりも偉大である。私はぎらつく油そのものであり、完成化そのものである。
―ヨーグモス」
(日本語がないため私訳)

わたしを悼むようなことはしないでくれ。これがわたしの運命なのだから。
-ジェラード
《ハーデス》のフレーバー・テキストの『私たち』から察するに、「エメトセルクさん」にはおそらく仲間か同士、あるいは率いていたものが居たのでしょう。
「ヨーグモス」が、機械とぎらつく油からなる異形のファイレクシア人を束ねていたように。
そして「エメトセルクさん」も、かつては「ヨーグモス」のように「人間」であり、彼・あるいは彼らの野望の中で人間ではなくなってしまったのかな、と思いました。
そして《ハーデス》が持つ「アバター」も特別なクリーチャー・タイプの1つ。
特定の種族・強大な存在・概念・ひいては世界の「化身」を表すクリーチャー・タイプです。

つまり、「エメトセルクさん」は《ハーデス》になったことでもう「一個人」ではなく、何かの力の「化身」になってしまったのでは?
……それでもカード名に《最古の魔道士》と、特定のものを指すっぽい冠がついているのは気になるのですが。
そう考えると、カードを引く=恒久的な何かを得る《ヨーグモスの取り引き/Yawgmoth’s Bargain》よりも、墓地のカードを使えるが1回限り=消耗していく・失っていく《ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will》が選ばれたことは、「エメトセルクさん」のバックグランドをとても示唆していそうだなと思います。
そして……この記事を書く中で、あまり確認していなかったFF14の統率者デッキのカード・継承史(原作絵)カードを初めてしっかりチェックしたのですが。

継承史カードで「エメトセルク」さんがあてがわれているMtGのカードは、《ヨーグモスの息子、ケリク/K’rrik, Son of Yawgmoth》。
「息子」と書いてありますが実子ではなく、ヨーグモスの中心的な部下の一人です。

このとおり、継承史カードでも、「エメトセルクさん」には「ヨーグモス」に関連する人物が選ばれており。

そして統率者セット版の「エメトセルクさん」も、《ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will》を彷彿とさせる、墓地から1度だけ呪文を再利用して消えていく能力を持っていて。

――「ヨーグモス」の最期を描いた《名誉回復/Vindicate》の統率者デッキ版イラストの人物も……名前は書かれていませんが……おそらく、「エメトセルクさん」、あるいは「エメトセルクさんだったもの」でしょう。
ここまで踏まえると、「エメトセルク」に「ヨーグモス」のストーリーと要素を重ねているのは意図的なデザインであし、そしてMtGからFF14・そして「エメトセルク」というキャラクターとその人生へのリスペクトなのだろうなと思いました。

そう考えると、「エメトセルク」さんが左上に(たぶん)書かれている継承史版《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》=「漆黒のヴィランズ」がすげ~~~意味深~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ってなりますね。
「漆黒のヴィランズ」があてがわれた《ドビンの拒否権/Dovin’s Veto》は、MtGの悪役の1人「ドビン・バーン」の名を冠した呪文です。
効果としてはクリーチャーではない呪文をほぼほぼ絶対に打ち消す(唱えることを妨害して墓地に送る)というもの。統率者版のエメトセルクさんを結構妨害できるテキストですね。

そして「ドビン」は元々、カラデシュという世界(次元)を統括する機構(領事府)の人物だったのですが、のちに先述の大悪役の一人「ニコル・ボーラス」の手先となり、別の世界(ラヴニカ)の統治機構(アゾリウス評議会)を掌握してボーラスの侵略計画を支援します。
この「元は秩序・正義側の人物が混沌・悪側に寝返る」をさぁ……「秩序・正義=光の戦士」って考えるとさぁ……
白青の呪文なのに「漆黒のヴィランズ」ってさぁ……つまりさぁ……!!! 「光の戦士の故郷とは別の世界」にいるエメトセルクさんとさぁ……!!! そういうことなんじゃないの……!!??
そういうことじゃなかったとしても、ここまで「ヨーグモス」を重ねられた「エメトセルク」さん、すごい気になるしなんか人気になるのも分かる気がします。
2025.06.10.追記:頂いた反応
ありがたいことに、アーデンさんの下書き一回投げた投稿・本投稿どちらもたくさんのリアクションを頂きました。
ありがとうございます!
この記事がたくさんのFFファンの皆さんに届いていたなら、そしてMtGのカードテキストの持つパワーと表現力、それを可能にした30年以上の積み重ねとMtGカードデザイン班さんの並々ならぬ力の入れっぷりが少しでも伝わっていたら、いちMtGファンとしてこの上ない喜びです。
そして第2弾も期待してくださっている方がいらっしゃってうれしいです!
FF原作を味わう前に…脳みそが新鮮なうちに書いていきたいと思っています! 初見の脳みそはどの界隈でも貴重なので。
以下、頂いた反応を書かせていただきます(すべてではないです)
一部、取り上げたFF14~16のネタバレを含む可能性があるので、気にされる方は薄眼で通過してください。
本当にFF初見ですか???
⇒一部、核心ではなさそうな情報を知人から耳にしたりはしていいるものの、ゲームプレイ歴としてはマジでFFシリーズは一切通っていません。ドラクエ派でした。最推しは8です
考察がすごい!
⇒ありがとうございます! ですが一番すごいのは自分でも読み取れるくらい要素を盛り込んでカードをデザインしたカードデザイン班の皆さんです!!!!!!
これは本当に覚えて帰っていただきたいです。MtGのカードデザイン班すごいんだ!
だいたい合ってます
⇒マジで?????????
特にアーデンさんパートの下書きへのリアクションで頂きました。あの無法テキストで再現度高いってどういうことなの???
あとFF15世界への「ちょっとしたバ○オハザードではないか?」も実は半分冗談で書いたのですが、マジらしいです。マジで??????
ネタバレ踏まないで通過して!!!
⇒頑張ります!
ちなみにFFさん側のキャラクター名で検索したり公式HP見たりはしないようにしています。
引用RPも細目で一旦見てから読んでます。
自分も今回考察したり調べたりしてみて、改めてしっかり原作をプレイしたいなという思いが強まりました!
アクティブタイム制RPG苦手なのだけちょっと不安ですが、頑張ります(2回目)
目下、年内に4~6(頂き物)、13(勧められた①)、9(勧められた②)、15(コンパクト版があるらしい?)が出来たらいいなの気持ちです!
14はエメトセルクさん推しのみなさんにめちゃくちゃプッシュしていただきましたが、一旦買い切り組を一通り制覇してからになりそう…!
エメトセルク関連のカードのネタがやっとわかりました
エメトセルク関連の再現度が高すぎた
⇒解説冥利に尽きます、ありがとうございます!
かなりFF14ファンの皆さんが感心されていたので、ヨーグモスのモチーフを重ねているのは本当にすごいデザインだな…となりました。
この「MtG側キャラとの見立て/モチーフ重ね」も、FFコラボで新たに開拓されたカードデザイン手法かもと考えると…すごい!
おわりに
全然語り足りないんですがなんか文字数がすごいことになったのでいったんここまで。
もしFF勢の方いたら引用RPやメンション・マシュマロで反応いただけると嬉しいです。
初見の感想へのベテランの反応も、どの界隈でもいい栄養です。
そして! カードでの再現度すごい!このキャラを使ってみたい!と思ったら、ぜひ!マジック:ザ・ギャザリングの世界・多元宇宙へお越しください!


おすすめは友人さんと一緒に初心者講習会に参加したり、マジックリーグへの参加から、FF限定構築戦に入るルートです。
MtG公式も非常に今回力を入れているので、よろしくお願いします!
また、ふだんは「週刊ふんわりパイオニア便り」をはじめ、TwitterとYoutube投稿にてパイオニアに関する発信をしておりますので、ぜひフォロー・チャンネル登録をお願いします! 大変励みになります。
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それでは、また!